聞こえたのは夜の終わりのカンパネラ







最後に、真っ青な空を
清々しい気持ちで見上げたのは
一体いつの事だっただろう。

ぼんやりと
わたしは光り輝く暗闇を見つめた
記憶に残る青い空ではない、真っ暗な宇宙
そこで、何度も何度も
花火のように光が上がる
それは
煌々ときらめいて
とても美しかったが
それは
轟々と唸りをあげて
人の命を喰っていた

ひとつ
光が生まれるたびに
ひとつ
命が消えていくのだという、その光からは
兵士の叫びも
仲間の痛みも
わからなかったけれど


わからないからこそ
それはとてもとても
痛かった

ぎゅうと目を瞑って、わたしは息を顰める

世界の冷たい闇に隠れて
世界の崩壊する音に紛れて
もう誰にも見つからなければいい
そうすれば悲しみも苦しみもやってこない

そう思ったから
でも







そのたびに
彼が呼ぶんだ
わたしや
この世界が
逃げようとしたって
いつもいつも
どんなときも
彼は



「聞こえているんだろう」



わたしや世界を
見失ってはくれない


「刹、那ァ」
「泣くな」
「あたし....死んじゃうの?」


自分の言葉で見つけた未来

ぞっとした
だけど、


「死なせない」


そう言った、機械越しの声がひどく真っ直ぐで
気が付いたら、
わたしは恐怖も忘れて
ぼろぼろと涙をこぼして泣いていた



「う」
「...
「あい」

「心配しなくていい。」


人を喰うあのひかりに触れて
揺らぐせかいで
悲鳴に混じって彼の強い声を聞いた、
わたしは精一杯に泣き声をあげた


ねえまだ いきているの
ここにいるの


たくさん人が死んでいったけど
たくさん悲しみを拾ってきたけど



「刹那、あた、し、まだ、生きていたいよお......!」



死が怖くて
足が竦んでも
幾多のかなしみに
苦しむことになっても



「俺もだ」



彼が
一緒にいてくれるから
わたし自身が
生きたい、と そう思ったから



苦しいことも哀しいことも
きっときっと
ぜんぶ背負って
笑って行こうと思ったんだ


だから
我儘で欲張りで図々しくて
けれどとても純粋なその願いを
全うするチャンスをくれるなら

わたしはもう
逃げたりしない





この世界から 逃げたりなんかしない







「スメラギさん、指示を ください」







そっと涙を拭って 前を見る
光り輝く暗闇に
きらりと
エメラルドの閃光が走っていった








033009
(立ち止まっていたって怖いのは同じだった)