life is fragile and we never know.






まだ春先だというのに妙に暖かすぎる、午後四時三十五分。
未だに空が赤く染まる気配は一向に無く、
不思議なもんだなと思いながら黒い外套を壁にかけて
ライドウは鳴海への調査報告を済ませた。
その後自身の部屋へと向かった彼は
その見慣れた光景に足を踏み入れて すぐ
呆れた様に溜息をつく。

「……実は牛か何かなんだろうか…」

座って眺める布団の上、
緩く流れる髪に長い睫毛、角の無い緩やかな曲線の身体。
布団を手繰り寄せてうずくまるその姿は 丁度猫か何かのよう。
しかしライドウはその目の前の女がどれだけ睡眠を取る女か知っている。
知らなければ可愛いとでも思えるのだろうか
ふとそう思った彼に しかしその自信は無い。

、」
「……何よ」
「…何時から、寝てる?」
「……知らない……鳴海さんに聞いて」

再び顔を埋めるを叩き起こそうかとも思ったライドウは
それでも思わずその思考を止める。
恋しがってくれてたりとか 寂しさでいじけてたりとか
そんな事、彼女みたいな子にもあるんだろうか。

「…………、俺 またすぐ出かけるんだけど」
「…だめよ」
「なぜ?」
「……怪我されたらあたしの仕事が増えるから」
「怪我なんてしな」
「へェ?」

布団から起き上がったは不意にライドウの腕を掴む。
学生服のボタンを外し始めた
ライドウは少し驚いて肩を揺らしたが
それ以上は何をするでもなくじっとを見つめていた。
扉は閉まっている上に、何より慣れと諦めが彼にそうさせる。
そうして ライドウの襟シャツの袖を捲るまでもなくそこに見えたのは
紛れも無く、彼女の嫌うその色で。

「うそつき」
「ごめん。」
「…………、…ライドウ」

腕を掴んだまま、
は感情を抑えた声で呟いた。
しかしライドウを見上げるそれは
年相応の少女に相応しい、不安と愛情と戸惑いに満ちた双眸。
愛しているからこそ
自由にしたい
しかし自由にするからこそ
不安になるのだ
命というものは
そんなにも強いものではない
命を扱う彼女にはよく分かる

「…あたしがどれだけ愛してるか知らないうちに死んだら死体はカラスに食わせるからね」
「……それは…」

犯罪なのではなかろう、か。
そう思ってもそれがライドウの口をついて出る事は無いのは
自分の布団の上に座り、未だに腕を放してくれない
目の前の女を少し、愛しく思ったから

「…死なない。」
「…………どこにそんな」

保証が、
そう言い掛けたは口を噤む
見上げれば静かに口元を緩めたライドウの双眸は炯々としていた
そうしてを引き寄せて
耳元で呟く、
そのライドウの低い声がの脳を麻痺させてゆく

「俺が死んだら、一体誰があなたを護るんだ」

甘い声でとどめを刺す、彼はずるい と
はそう思った


しかし結局、それでも良いかとも思う


彼だけになら 支配されるのも悪くない








ライフセイバー
(Life saver)





(そうやって 独占される 記憶の全て)
042006