少女と少年が大人になるまでの約10年間の物語。
#1 落ちゆく夜光
(彼は夏の夜に聞く風鈴のような心地好さで容赦ない言葉を音にする、不思議な人だった)
#2 愛しさを捨てられない
(屈託のない笑顔で笑って二人で並んで歩いていく様子を眺めながら、カカシはどうしたものかと天井を仰いだ)
#3 君の雨が上がる頃に迎えに行くね
(時間は決して止まってくれないし、一番幸せな時間は一生続いたりしない)
#4 きみは良い奴だ、最高だ
(シカクは一度そこで、言葉を区切って瞬きをした。教え子を受け持ってからの日々を思い出す)
#5 願いが泡沫のように幼くて、私は人魚になれなくて
(深く問い詰めもせず、ただ風に髪を靡かせてイルカは真摯に頷いた)
#6 純情のアルデバラン
(昇格してほしくなかった忍が昇格した時、一体彼は、どんな思いで笑って祝ってくれていたのだろうか)
#7 この恋に涙は必要ない
(カカシは指先で少女の頬を撫でて、そうして朝日の中で眠る少女を朝日から覆うようにゆっくりと身を屈めた)
#8 雫が流れる頬を私だけが見ていた
(テンゾウは外への警戒を続けながら、室内の壮絶な光景を静かに眺める)
#9 ブルービードロ
(しかし、宇宙の果てで煌めく光のように真っ直ぐな少年の瞳が、お前の気持ちはどうなんだ、と聞いてくる)
#10 その光の透明感と持続力について
(全部を受け入れる勇気さえ生まれない気持ちはきっと特別なんかじゃないと思ってたのよ)
#11 壊れ物ばかりを永遠にかりそめたがるぼくたちは
(それを合図にするかのように、二人は幾度も唇を重ね合って静寂を食んだ)
#12 オリオンのかんむり
(この里に来てから8年間、ずっと、どんな時も守ってくれた男に、不安ごと全部委ねてしまおう、と思った)
#13 僕が惹かれたのは君の諦めない瞳
(一つ一つなぞるように触れた傷跡はどれも、命の通う温かいものだった)